【書評】働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法

2010年05月14日 / 転載 2011年10月27日 / 792(1) views
レビュアー HAL_J

家族を幸せにするために一生懸命働いてるんだ、家のことや子育てが出来ないのは仕方がない、っていうのが夫の言い分。日本人はいつまでこんな働き方をするんだろうね。うちの息子は、俺は絶対に英語を話せるようになって海外で仕事をするって言ってる。父親の姿を見た結果がこれだよ?哀しいよね。 Twitterへ

本当に気の毒に思うからなんとか考え方を変えてほしいと思って仕事ばかりでなくもっと家族のこともちゃんと考えた方がいいよってずーっと言ってきたけど、本人からしたら考えてるから仕事してるんだろ?って考えだから全然ダメなんだよねー。 Twitterへ

働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)

働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法 (ちくま新書)

  • 評価 ★★★★★ 1日8時間未満の労働時間でめざましい成果を収めたい人、家族や周囲の人との人間関係を大切にしたい人に読んでほしい。

「働き方革命/駒崎弘樹」は病児保育・病後児保育のNPOフローレンスの運営が書いてあるのかと思って購入したのですが、全然違いました。この本は仕事の効率性追求を教えてくれる本、もっといえば「仕事」という従来の考え方そのものを解体してくれる本でした。1日10数時間働く長時間労働者、特にこの記事冒頭で紹介した「夫」のような人にこそこの本を読んでもらいたいです。

1日10数時間働く長時間労働者は往々にして「どの仕事が本当に重要か」「何のためにこの仕事をしているのか」という事を考えず(考えさせてもらえず)に仕事をしている人が多いです。そしてそういう長時間労働者は知らないと思いますが、本当に重要な仕事に集中して取り組めば1日8時間労働でも、ダラダラと1日14時間働いている人以上の成果を収めることが出来ます。そう、無駄な仕事を削減すれば、労働時間は短縮出来る。「すべての仕事が大事」なんて事を言っている人間に仕事改革、決められた時間内に成果を出せる仕事なんて出来るわけがありません。

この本を読んでいて、無駄な資料をたくさん作っていた過去を思い出して、苦い思いになりました。誰も読まないし、重要でもない資料を何日も深夜まで残業して作っても、結果何も変わりませんでした。あの会議資料も私に任せてくれれば、作成・情報共有の手間を十分の一以下に出来る資料に作り変えることが出来ました。でも、20代に何の権限もない大企業だとそういう事を言う発言権すらありませんでした。そしてまた、他の人達はみな目先の仕事ばかりして、考える事を放棄していました。周りから非難されないように・波風を立てないようにするために、長時間労働をしていました。だから長時間働いても本当に重要な仕事をしていないため、利益につながる事はありませんでした。

仕事の生産性を追求する点で、「働き方革命」と「デッドライン仕事術/吉越 浩一郎のやり方は同じです。まず働く時間を強制的に減らす。働く時間を減らされた社員は時間内で仕事を終わらせるために、それまで使っていなかった頭を使って仕事で創意工夫を始めて仕事の生産性を高める。人間は制約が無いと工夫をしないのです。他にも本書の中では具体的にどうすれば労働時間を減らすことができるか紹介されています。本書は「デッドライン仕事術」同様に仕事効率化のためになる本です。

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)

1日10数時間働いていた著者はまず仕事の時間を減らし、午後6時に退社するようにします。こうすることで、本当にやるべき重要で大切な仕事は何かを意識せざるをえなくしました。朝から夜遅くまで仕事に明け暮れる著者は、当初仕事ばかりをしていて「自分にとって大切なこと」をほとんど全て見失ってしまいます。そして、一度見失った後に「自分はいったいどういう風に働きたいのか?」と仕事の再定義を開始します。かつての著者同様に朝から夜遅くまで働き、なぜそこまで長時間働いているのか理由を見失っている人は多いと思います。

1日14時間もダラダラと働いている人間は「仕事をしている自分」に満足して創意工夫なんてしません。そして、成果を上げずに長時間働けば「頑張って熱意があるとみなす上司・同僚」がいればさらに悪循環は加速します。例えば、実際に1日14時間働いている営業マンの大半は喫茶店とマンガ喫茶の常連です。平日、山の手線近郊の喫茶店にいけば営業マンだらけです。そして、昼間サボっているから「14時間働いているふり」が出来るのです。

本書を読んでワクワクしたのはベンチャー企業の良さが存分に発揮されていたことです。ベンチャーは「ないないづくし」ですが、一つだけ決定的に良いことがあります。それは「大企業特有の組織内の理不尽で不可解なしがらみが無いこと」です。大企業だと仕事の仕方を一つ変えるために、各所で様々な調整をしなければなりません。そして何かを変えようとする必ずそれに反対してくる「抵抗勢力」の人々がたくさんいます。でも、ベンチャー企業だとそういう手間をかけずに抜本的に迅速に仕事のやり方を変えることが出来ます。

そう、変なしがらみがなくて自分の頭で考えられる人達が新しい仕組みを考えれば、ベンチャー企業でも大企業以上の効率性を発揮することが出来る!著者が導入する様々な仕事の効率性向上の試みには読んでいてワクワクしました。私だって、前職の法人営業を担当していた頃は残業を十分の一にして、成果をそれまでの2倍以上に出来るとずっと考えていました。でも、大企業特有の20代の若手は発言権ゼロという状況だったので、抜本的な改革は出来ませんでした。長時間働いているけど、成果が上がらない人達に本書を読んでもらいたいです。バタビンの人(いつもバタバタしているけど貧乏な人達)は考える事を止めている人が多いですから。

長時間労働をしている人達は新しい分野を勉強する余裕がありません。私の前職では社内には未だにタッチタイピングすら出来ない40代以上の人達がゴロゴロとしていました。そんな彼らがモタモタとしたタイピングで、つまり資料を作るのに長時間かけて仕事をしていました。これ、端から見ると滑稽すぎます。タッチタイピングを覚えれば、資料作成時間は半分に出来るのでは?といつも心の中で思っていました。でも、彼らは長時間労働をしているため、タッチタイピングを覚える時間が無いのです。滑稽な状況です。

私は今でも経営者は1日14~17時間は仕事のために時間を使うべきだと思っています。でも、これは職場にいてひたすら仕事をすべしという事では決してありません。職場で8時間、重要な仕事に集中して取り組む。残りの時間でManagementや最新の業界動向を勉強する、また家族や社員の事を理解するための時間を取る。他にも運動して身体を健康に保つようにする。こういった自分を高めるための努力、自分の能力を最大限発揮するための努力をすべきだということです。「7つの習慣」でいう「重要事項を優先する」「刃を研ぐ」を実践すべしということです。勉強・運動・休息・家族と共に過ごす事をせずにダラダラと働いている人は決して目覚ましい成果を残せません。私は勉強する時間がない人間が競争力を保てたり、差別化出来る訳が無いと考えています。R&D(研究開発)の比率が低い会社がInnovation技術革新を起こせる訳がないのと同じです。この事が本書を読めば分かると思います。仕事ばかりしていて、鼻毛や耳毛が処理されずにボウボウになっている人、BMIが25を越す肥満体の人、家族とほとんど話さない人。そんな人達に本書を読んでもらいたいです。

いま「7つの習慣」の文章を紹介しましたが、「7つの習慣」を読んだことがある人にはまさに著者は「7つの習慣」を実行しているなと思えるはずです。立派な知識や教養を備えているが、それらを十分に活かす知恵を学べなかった人には「働き方革命」と「7つの習慣」を合わせて読んでもらいたいです。

ここから、7つの習慣と関連させて説明すると、第1領域(重要で緊急)と第3領域(緊急だけど重要じゃない)の仕事にばかり気を取られていて、第2領域(重要だけど緊急じゃない)の業務に取り組めない人達。そんな人達が第2領域で考えられるようになる本です。著者もかつては第2領域(仕事の効率化を考える、家族や社員の事を理解するといった事)をおろそかにしている人間でした。だから長時間働いているけど、他の社員や恋人・家族との関係がギクシャクしてまったく上手くいかない人でした。そんな人が書いた本なので「第2領域(重要だけど緊急じゃない事)」を重視せよという本書の内容は説得力がとてもあります。

日本の働き方や社会は他にもたくさんの問題がある「課題先進国」です。でも、その逆境を逆手に取って、斬新なManagementを導入して、目覚ましい成果を出せば競合に大きく差を付けることができる。そんな勇気を本書からもらいました。短時間で仕事の成果を収めたい人、家族や身の回りの人間との関係を大切にしたい人、是非本書を読んでください。

「ピンチはチャンスさ。若い人よ、私らはもう大きな変化を起こす気力はないのだよ。だから貴方たちがこのピンチを機会に変えて、新しい変化を起こして欲しいんだ。分かるかい?」僕は黙って頷いた。【働き方革命 185頁】

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